中学生・高校生が疲れやすい、イライラするのはなぜ?思春期の体と心を、食事から整える順番

栄養カウンセラー ちあきこの記事を書いた人
栄養カウンセラー ちあき
小児外科専門医 小森広嗣 監修

部活から帰ってきたら、カバンを置いたままソファに倒れ込んで動かない。話しかけると「うるさい」「あとで」。朝は何度起こしても起きられない。

「反抗期だから仕方ないのかな」「やる気がないだけ?」と、ため息をついている親御さんも多いのではないでしょうか。

先にお伝えすると、思春期の疲れやイライラは、反抗期や性格だけでなく、成長のスピードに体の材料が追いついていない合図のこともあるんです。 だから、心にいきなり手を入れる前に、食事から体へ、体から心へ。下から順番に整えていく。今日は、その順番をお話しします。

なぜ思春期は、こんなに疲れやすくてイライラしやすいの?

中学生・高校生の時期は、一生のうちでも、体がいちばん大きく変わる時期のひとつです。

  • 身長がぐんと伸び、筋肉や骨、血液が一気に増える
  • 女の子は月経が始まり、毎月、血液(鉄)を失うようになる
  • 部活・塾・課題で、エネルギーの出ていく量が増える
  • 夜のスマホや勉強で、眠る時間が後ろにずれやすい

つまり、体をつくる材料がいちばんたくさん要る時期に、出ていくものも多く、眠りは削られやすいんです。そこに、食事が「お腹がふくれればいい」形になっていると、材料もエネルギーも足りなくなります。

ガソリンが半分しか入っていない車で、毎日坂道を走っているようなもの。疲れやすく、ちょっとしたことで気持ちが揺れるのは、ある意味で自然なことなんですよね。

カウンセリングでも、「最近、すぐ横になる」「話しかけると怒る」「朝がつらそう」というご相談は、本当によく伺います。そのとき私が最初に見るのは、性格ではなく、毎日の食卓と、食事と食事のあいだの時間です。

思春期は、材料がいちばん要るのに、足りなくなりやすい時期。

① 食事:毎食に「手のひら1枚分」のたんぱく質を

体をつくる材料の中心は、たんぱく質です。筋肉や血液、肌や髪だけでなく、気持ちを落ち着かせたり、やる気を出したりする働きの材料にもなっています。

国の食事の基準(日本人の食事摂取基準 2025年版)では、たんぱく質の推奨量は1日あたり、中学生(12〜14歳)で男子60g・女子55g、高校生(15〜17歳)で男子65g・女子55gです。

栄養学の世界には、成長期や、部活などでよく体を動かす子は、体重1kgあたり1.5〜2gを目安にする考え方もあります。

それも知ったうえで、私が毎日の目安としてお伝えしているのは、まず「手のひら1枚分」です。数字を追いかけるより、続けられる形のほうが、結局はたくさん届くからなんです。

  • お肉やお魚なら、その子の手のひら(指をのぞいた部分)くらいの大きさと厚みを、毎食ひとつ
  • 体が大きくなれば手も大きくなるので、その子の手が、その子のいまの目安になります
  • お肉・お魚がむずかしい食事のときは、卵・納豆・お豆腐・チーズを組み合わせて

手のひら1枚分(約80〜100g)のお肉やお魚で、たんぱく質はおよそ20g。毎食1枚分に、ごはんや牛乳・卵のたんぱく質が加わると、だいたい国の推奨量に届きます。持病のある子は、量について主治医の先生に相談してくださいね。

よくあるのが、朝はパンだけ、お昼は麺だけという形。お腹はふくれても、材料はほとんど入っていないんです。パンに卵を、麺にお肉や卵を——まずは「ひとつ足す」ところから。

毎食、その子の手のひら1枚分。

② 補食:部活・塾の前後の「空白の時間」を埋める

中高生の食事でいちばん抜けやすいのが、お昼ごはんから夕ごはんまでの長い空白です。お昼が12時、部活や塾が終わって夕ごはんが20時——8時間近く、何も入っていないこともあります。

カウンセリングでよく聞くのが、「夕方の勉強の時間になると、気が散って集中できない」というご相談です。夕ごはんの前は、お腹が空いて、エネルギーが落ちやすい時間。集中が切れるのを、やる気や性格のせいにする前に、時間帯を見てみると、理由が見えてくることがあるんです。

そんなとき私がよくお伝えするのは、

  • 一口サイズのおにぎりを2〜3個。具はおかか・ツナ・昆布・枝豆など、少したんぱく質が入るものを
  • 部活の前後なら、おにぎり+ゆで卵、おにぎり+チーズ、牛乳や豆乳
  • コンビニなら、おにぎりに、サラダチキン・ゆで卵・チーズ・ヨーグルトのどれかを「相棒」に

そしてもうひとつ大事なのが、いきなりお菓子から始めないこと。お菓子を禁止しなくて大丈夫です。先におにぎりを食べて、それでも足りなければお菓子。やめさせるのではなく、順番を変えるだけで、夕方の過ごし方が変わることがあります。

空白の時間に、おにぎりと「たんぱく質の相棒」を。

③ 女の子の月経と鉄:食事でできること

月経が始まると、女の子は毎月、血液と一緒に鉄を失います。鉄は、体のすみずみに酸素を運ぶ材料。足りなくなると、疲れやすい、息が切れる、集中できない、イライラしやすい——そんな形で出てくることがあります。部活でたくさん体を動かす子や、ダイエットを気にして食べる量を減らしている子は、なおさらです。

食事でできることは、こんなことです。

  • 赤身のお肉・お魚(かつお・まぐろ)・あさり・卵を、ふだんの食卓に
  • 小松菜・ほうれん草・大豆製品も、お肉やお魚と一緒に
  • 野菜や果物のビタミンCを同じ食事に添えて
  • 食事のときのお茶やコーヒーは、少し時間をずらして

「食べる量を減らしたい」と言い始めた子には、減らす話より、「何を入れるか」の話を。体が変わる時期に材料を減らすと、疲れやすさや月経の乱れにつながることがあります。

月経が始まったら、鉄の入る食卓を。

④ 眠り:朝起きられないのは、怠けているからとは限らない

思春期は、体の時計が夜型にずれやすい時期でもあります。夜に眠くなりにくく、朝に起きにくい。そこに夜のスマホや勉強が重なると、眠りはどんどん後ろにずれていきます。

  • 夜は、寝る1時間前から画面を少しずつ遠ざける(いきなりゼロでなくていい)
  • 朝は、カーテンを開けて光を浴びる。体の時計を合わせるスイッチです
  • 朝ごはんに、たんぱく質をひとつ(卵・納豆・チーズ・牛乳)
  • 寝る前にお腹が空いて眠れない子は、一口おにぎりや温かいスープを少しだけ

朝起きられない状態が何週間も続き、学校に行けない日が増えているときは、ご家庭だけで抱えずに、医療機関に相談してくださいね。

朝の光と、夜の画面の距離。

⑤ 心:思春期の子に、どう声をかける?

思春期の子は、親からの「ちゃんと食べなさい」「早く寝なさい」が、いちばん入りにくい時期かもしれません。言えば言うほど、扉が閉まっていくように感じることもありますよね。

だからこそ、私がおすすめしたいのは、

  • 言葉の代わりに、一皿を出す。「大丈夫?」と聞く代わりに、そっと具の多い卵焼きや、温かい豆乳スープを置いておく
  • 調子がよさそうな日に、「最近、なんだか集中できてるね。なんでだと思う?」と、本人に聞いてみる。こちらが説明するより、本人が「ちゃんと食べてるからかな」と気づいたほうが、ずっと続きます
  • できたことを、1つか2つ、本人の口から。親から言われるより、自分で言えたことのほうが、自信になります
  • 親だけで抱えない。身近な家族から言われるのと、家族以外の大人から言われるのとでは、届き方が違うこともあるんです

思春期のイライラは、「あなたのせい」でも「育て方のせい」でもありません。体が大きく変わっている最中の、自然な揺れでもあります。食卓を整えながら、その揺れを、少し遠くから見守っていきましょうね。

言葉より一皿。気づきは、本人の口から。

ここまでできていれば、大丈夫です

  • 毎食に、手のひら1枚分のたんぱく質が、だいたい入っている(炭水化物だけの食事が続いていない)
  • お昼から夕ごはんまでのあいだに、おにぎりなどの補食が入る日が増えた
  • 月経のある子の食卓に、赤身のお肉やお魚・卵が、週に何度か出ている
  • 朝はカーテンを開けて光を浴びている
  • 疲れやイライラを、性格や反抗期のせいだけにしなくなった

こんなときは、医療機関へ

思春期の体の変化には、ご家庭だけで抱えないほうがよいものもあります。体重が急に減った、食べる量を極端に減らしている・食べたあとに吐いている、それまで順調だった月経が3か月以上来ない・15歳になっても月経が始まらない、月経の量がとても多い(ナプキンを1〜2時間ごとに替える・7日以上続く)、立ちくらみや息切れ・顔色の悪さが続く、朝起きられない日が続いて学校に行けない、気分の落ち込みや眠れない日が2週間以上続く。 こういうときは、医療機関に相談しましょうね。相談することは、甘えではなく、子どもを守る大切な一歩です。

今日からできるワンアクション

今日は、ひとつだけ。

部活や塾のある日に、一口サイズのおにぎりを2つ、「おかえり」と一緒に用意してみませんか。

食べたかどうかを確かめなくて大丈夫。置いておくだけでいいんです。1週間続けてみて、夕方の顔つきや、夕ごはんのときの会話が少し変わったら、それが体からの返事です。完璧じゃなくて大丈夫。ちりつもで、一緒にやっていきましょうね。

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参考にした資料

LifeCrescendo が目指しているのは、困りごとが消えることだけではありません。栄養で体と心の土台を整え、その先で、子どもとご家族が「楽しく生き続ける」ところまで、一緒に歩むこと。いまの困りごとから、1つ、2つずつで大丈夫です。(私たちが大切にしていること)

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この記事をお届けした人

栄養カウンセラー ちあき

ちあき(小森 千明)
元・特別支援学校教諭 | 栄養カウンセラー
── ライフコーディネーターとして、ご家族の食卓と、毎日の選択の隣にいます

特別支援学校の教員でした。教えていたのは、音楽です。言葉にならない声を、聞き取る仕事でした。その聞き取り方を、いちばん近いところで試されたのが、わが子の子育てです。

メロディーは、その人のもの。私が変えるのは、リズムのほう。

小児外科専門医のクリニックで、栄養カウンセリングを重ねてきました。いまも毎日、現場にいます。

弘前大学 教育学部 障害児教育課程卒。特別支援学校教諭一種免許(知的障害・肢体不自由・病弱)、中学校・高校 音楽教諭一種免許。オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート(ONE)認定。『7つの習慣®』実践会認定ファシリテーター。3児の母。

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ちあき|こどもの栄養カウンセラー×3児の母🌱 @LifeCrescendoC