この記事を書いた人
栄養カウンセラー ちあき
小児外科専門医 小森広嗣 監修
「あとひと口だけ」「せっかく作ったんだから」「残したら、おやつなしね」
気づくと、ごはんのたびに同じ言葉を言っている。子どもは口を閉じて、こちらはため息。食卓が、いつのまにか小さな戦いの場所になっている——そんな夜、ありませんか。わが家にも、そういう時期がありました。
先にお伝えすると、食卓の声かけでいちばん効くのは、「食べさせる言葉」より「役割を分ける言葉」なんです。 何を・いつ出すかは大人が決める。食べるか、どれだけ食べるかは子どもが決める。この線を引くだけで、食卓はびっくりするほどやわらかくなることがあるんです。
「もうひと口」は、どうして逆効果になりやすいの?
「食べなさい」と言われると、子どもにとって食卓は「食べる場所」から「言われる場所」に変わってしまいます。
前の記事でお話ししたように、食べない理由の多くは、飲み込む・味わう・消化するの、体の入口のどこかにあります。体の側でつらいのに、「もうひと口」と押されると、子どもは食べ物そのものより、その時間を避けたくなるんですね。押すほど、次の食卓で口が固くなる。大人ががんばるほど空回りしてしまうのは、そのせいなんです。
押すほど、次の食卓で口が固くなる。
大人が決めること、子どもが決めることは?
子どもの食事には、役割分担がある、という考え方があります。
| 大人が決めること | 子どもが決めること |
| 何を出すか | 食べるか、食べないか |
| いつ出すか(ごはん・おやつの時間) | どれだけ食べるか |
| どこで食べるか(座って・テレビを消して) | どの順番で食べるか |
大人の仕事は、体の材料になるものを、決まった時間に、食卓に並べるところまで。そこから先は、子どもの仕事です。
「それじゃあ、白いごはんしか食べないんじゃ…」と思いますよね。そこで役に立つのが、お皿の上の「重み」を少しずつ変える工夫なんです(白いものに寄る子のお話は、こちらの記事でくわしく書いています)。並べるものを工夫するのは大人の仕事、食べるかどうかは子どもの仕事。大人が自分の仕事をきちんとしていれば、それで大丈夫なんです。
並べるまでが大人の仕事。食べるかどうかは、子どもの仕事。
今夜から使える、4つの言葉は?
①「食べられる分だけ、どうぞ」
量を決めるのは子ども、と言葉で渡す一言です。少なめによそって、「おかわりもあるよ」。食べきれた、という小さな成功が、次の食卓を軽くします。
②「どんな味だった?」
「おいしい?」と聞くと、答えは「おいしい」か「まずい」の二択になってしまいます。「どんな味?」「かたい?やわらかい?」と聞くと、子どもは自分の体の感じ方を言葉にし始めます。「かたいからいや」が聞けたら、それは台所へのヒントなんです。
③「今日は、なめてみるだけでもいいよ」
初めての食べ物や苦手なものは、何度も目にして、においをかいで、触って、ちょっとなめて——そうやって少しずつ慣れていくものなんです。食べなくても、食卓に並んでいた、それだけで一歩。(新しい食べ物を怖がる子のお話は、また別の記事でくわしくお届けしますね)
④「一緒に、実験してみない?」
我慢やルールを、ワクワクに変える言葉です。たとえば、「夏休みの自由研究で、自分のおなかを研究してみない?」。何を食べた日に、おなかがどうだったか。子どもが研究者になると、同じ工夫が「やらされること」から「確かめてみたいこと」に変わるんです。「させる」を「一緒に試す」に。主語が子どもに移ると、食べることが少しだけ、自分のことになるんです。
「食べさせる言葉」を、「選べる言葉」に。
兄弟は食べるのに、どうしてこの子だけ?
「お兄ちゃんは同じものを食べて元気なのに」——これも、本当によく聞く声なんです。
でも、同じ食卓で同じものを食べていても、体の質や、吸収のしかた、使う量は、子どもによって違います。兄弟で同じものを食べているから安心、とは限らないし、逆に、この子だけ食べられないのも、その子の体の違いなんですよね。比べる言葉は、そっと横に置いてみませんか。
同じ食卓でも、体は一人ひとり違う。
叱りたくなったときは、どうしたらいい?
それでも、叱りたくなる日はあります。疲れているとき、時間がないとき。それは当たり前のことなんです。
そんなときは、食卓を早めに終えることも選択肢です。「今日はここまでにしようか」と、お皿を下げる。次の食事か、決めたおやつの時間まで、間食は出さない。叱らずに「次」を待つほうが、お腹が空いた状態で次の食卓に来られます。
それから、大人がおいしそうに食べている姿は、どんな声かけより強いメッセージになるんですよね。完璧じゃなくて大丈夫。ちりつもでいきましょう。
ここまでできていれば、大丈夫です
- いまの食卓に、たんぱく質・ビタミンとミネラルが、そこそこ入っている(炭水化物だけになっていない)
- 何を・いつ出すかは、だいたい決まっている
- 「もうひと口」を言う回数が、先週より少し減った
- 食べなかった日も、食卓に「並べた」ことを自分でほめられる
- 叱りたくなった日は、早めにお皿を下げる、という逃げ道を持っている
こんなときは、医療機関で相談を
声かけや食卓の工夫より先に、相談していただきたいサインもあります。体重が減ってきている、食べられるものの種類がどんどん減っていく、食べ物がのどにつかえて吐いてしまう、食事のたびに強いパニックになる。 こういうときは、ご家庭だけで抱えずに、医療機関で相談しましょうね。
今日からできるワンアクション
今日は、ひとつだけ。
今夜のごはんで、「もうひと口」を「どんな味だった?」に、一回だけ置き換えてみませんか。
返ってきた言葉を、スマホのメモに一行。「かたい」「すっぱい」「においがいや」。その一言が、その子の体からの手紙なんです。叱る材料ではなく、明日のお皿を考える材料として。
食卓が戦いの場所じゃなくなると、子どもは、自分から手をのばし始めることがあります。その日まで、大人は「並べる」を続けるだけ。それだけで、十分がんばっているんですよね。
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この記事をお届けした人

ちあき(小森 千明)
元・特別支援学校教諭 | 栄養カウンセラー
── ライフコーディネーターとして、ご家族の食卓と、毎日の選択の隣にいます
特別支援学校の教員でした。教えていたのは、音楽です。言葉にならない声を、聞き取る仕事でした。その聞き取り方を、いちばん近いところで試されたのが、わが子の子育てです。
メロディーは、その人のもの。私が変えるのは、リズムのほう。
小児外科専門医のクリニックで、栄養カウンセリングを重ねてきました。いまも毎日、現場にいます。
弘前大学 教育学部 障害児教育課程卒。特別支援学校教諭一種免許(知的障害・肢体不自由・病弱)、中学校・高校 音楽教諭一種免許。オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート(ONE)認定。『7つの習慣®』実践会認定ファシリテーター。3児の母。
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ちあき|こどもの栄養カウンセラー×3児の母🌱 @LifeCrescendoC
