子どもの偏食、どうしたらいい?「飲み込む・味わう・消化する」3つの入口から、家でできること

栄養カウンセラー ちあきこの記事を書いた人
栄養カウンセラー ちあき
小児外科専門医 小森広嗣 監修

「もうひと口だけ、食べようか」

今夜もまた、言ってしまいました。お皿の上には、さっきから動かないお肉がひと切れ。子どもは白いごはんだけ先に食べ終えて、もう椅子から降りたそうにしています。

毎日の食卓が、小さな綱引きみたいになっていませんか。作った側は「せっかく作ったのに」、食べる側は「もういらない」。どちらも悪くないのに、どちらも少しずつ疲れていくんですよね。

先にお伝えすると、子どもの偏食は、わがままではないことが多いんです。「飲み込む」「味わう」「消化する」——体の3つの入口のどこかが詰まっていて、食べられない。だから、叱るより先に、どこが詰まっているかを見て、台所で形を変えるほうが早いんです。

今日は、そんな食卓の「食べない」を、3つの入口から順番に眺めてみたいんです。

偏食は「好き嫌い」だけじゃないの?

小児外科医の夫が、ある日こんなことを言いました。

「『食べない』って一言で言うけど、中身は一つじゃないんだよ。のどを通らないのか、味がわからないのか、お腹で処理しきれないのか。入口が違うんだ」

これを聞いたとき、私はハッとしました。それまで偏食を、ひとまとめに「好み」や「わがまま」の問題だと思っていたからです。

でも、体の側から見ると、「食べない」はもっと具体的なんです。

  • 飲み込む力(のどを、すっと通るか)
  • 味わう力(舌が、味をちゃんと拾えているか)
  • 消化する力(お腹が、食べたものを分解できているか)

この3つのどこかで詰まっていると、子どもは「食べたくない」と言います。本人にとっては、それがいちばん正直な言葉だからです。

そして、偏食は、あなたの育て方のせいではありません。足りなかったのは愛情ではなく、体の材料だったのかもしれないんです。

お肉を飲み込まない・丸のみする子は?(入口① 飲み込む力)

こんな様子はありませんか。

  • お肉を口に入れたまま、いつまでも飲み込まない
  • お茶や水で流し込む。あるいは、ほとんど噛まずに丸呑みする
  • 焼き魚、鶏むね肉、ゆで卵など、パサパサしたものを嫌がる
  • ごはん・パン・麺・ヨーグルトのような、やわらかいものに寄っていく

のどや食道の内側の粘膜は、体の中でもとても入れ替わりが速くて、数日でまるごと新しくなるそうです。だから材料が足りなくなると、真っ先に影響が出やすい場所なんですね。その材料の大事なひとつが、鉄です。

材料が足りないと、通り道が少し頼りなくなって、かたいものやパサつくものが通りにくくなる。でも本人は、生まれてからずっとその状態なら「飲み込みにくい」とは気づきません。代わりに出てくるのが、「これ、かたいからいらない」なんです。

台所でできること:「よく噛んでね」は、いったん横に置いてみませんか。声かけより、形を変えるほうがずっと早いんです。ひき肉、つみれ、卵とじ、具だくさんのお味噌汁やポタージュ。飲み込みやすい形にするだけで、お皿の残り方が変わることがあります。

濃い味しか食べない・「まずい」と出す子は?(入口② 味わう力)

こんな様子はありませんか。

  • 味の濃いもの、決まった味付けのものしか食べない
  • 薄味にすると、とたんに手をつけない
  • 「まずい」「変な味」と言って出してしまう
  • ふりかけやマヨネーズがないと食べられない

舌の表面には、味を感じる小さなセンサー(味蕾)が並んでいます。このセンサーも入れ替わりがとても速くて、その材料の主役が亜鉛なんです。材料が足りないと、味がぼやけたり、ときどき変な味に感じたりする。そうなると、確実に「安心な味」がする白いごはんや濃い味に寄っていくのは、その子にとってはむしろ自然なことなんですよね。

もし毎日の食事が、自分にだけ薄くて、ときどき苦く感じたら。私だったら、たぶん食べられません(苦笑)。

台所でできること:薄味に慣れさせるのは、いまは後回しで大丈夫です。代わりに、うま味を味方につけましょう。かつお節、のり、しらす、チーズ、ごま。うま味は弱った舌にも届きやすくて、しかもそれ自体がタンパク質やミネラルのかたまりなんです。「ふりかけがないと食べない」は、その子なりに届く味を探し当てている、ということなのかもしれません。

すぐ「お腹いっぱい」になる子は?(入口③ 消化する力)

こんな様子はありませんか。

  • 少し食べただけで「お腹いっぱい」と言う
  • 食後にお腹が張る、痛いと言う
  • 食べ終わるまでに、とても時間がかかる

口には入っているのに、お腹の中で止まっている状態です。食べたものを溶かしたり分解したりする力も、実は鉄やビタミンB群、亜鉛といった材料で動いています。材料が足りないと、前に食べたものがお腹に残ったままで、次が入ってこない。「もういらない」は、わがままではなくて、お腹の正直な返事なんです。

台所でできること:量を増やそうとするより、回数を分けるほうが入りやすいんです。一度にたくさんではなく、朝・昼・おやつ・夜に少しずつ。それから、脂を落としすぎないこと。お肉の脂身や卵の黄身は、体を動かすエネルギーになります。「ヘルシーに」は、食の細い子には少しお休みしてもいいんです。

全部当てはまる気がするときは?

ここまで読んで、「うちの子、全部当てはまるかも」と思われた方もいるかもしれません。実はそれ、珍しくないんです。

飲み込みにくいから、お肉を避ける。お肉を避けるから、鉄も亜鉛も入ってこない。材料が足りないから、味もわかりにくく、消化もしにくくなる。ひとつの詰まりが、ほかの入口にも広がっていきやすいんですね。

だからこそ大事なのは、いま、どこがいちばん詰まっているかを見ることなんです。そこが分かると、何から手をつけるかの順番が決まります。全部を一度に変えなくていい。順番さえ合っていれば、ひとつずつで大丈夫なんです。

栄養を整えれば、偏食は治るの?

ただ、栄養だけで全部が変わるわけではないんです。

食感や匂いへの強いこだわり、生まれ持った感覚の特性、これまでの食卓で積み重なってきた「食べる=つらい」という記憶。こうしたものまで、栄養だけですべて変わるわけではありません。

栄養がしてくれるのは、土台を上げることなんです。のどを通るようになり、味がわかるようになり、お腹が軽くなれば、その子が自分で「食べてみようかな」と広げていける範囲が、少しずつ広がっていきます。そこから先は、その子のペースと、時間の仕事なんですよね。

それから、ご家庭だけで判断しないでいただきたいサインもあります。体重が減ってきている、吐くことが続く、食べ物がのどにつかえて出してしまう、急に味がわからなくなった。こういうときは、食事の工夫より先に、医療機関で相談しましょうね。サプリメントも、自己判断で始めずに、かかりつけの先生と相談しながらにしましょう。

ここまでできていれば、大丈夫です

  • いまの食卓に、たんぱく質・ビタミンとミネラルが、そこそこ入っている(炭水化物だけになっていない)
  • 叱る回数より、形を変える回数のほうが多い
  • 「食べない」を、わがままではなく体の合図として見られている
  • 3つの入口のうち、うちの子はどこに近いか、なんとなく見当がついている
  • 危ないサイン(体重が減る・吐く・のどにつかえる・急に味が分からない)のときは、医療機関に相談すると決めている

今日からできるワンアクション

今日は、ひとつだけ。

この1週間、お子さんが「残したもの」を、スマホのメモに書いてみませんか。

かたいもの? パサつくもの? 薄味のもの? それとも、量そのもの? 残したものを並べてみると、さっきの3つの入口のどれに近いのか、うっすら見えてくることがあるんです。叱る材料ではなく、その子の体を知る手がかりとして。

「食べない」の向こう側に、その子の体からの小さな合図がある。そう思えた日から、食卓は少しだけ、やさしい場所になる気がしています。完璧じゃなくて大丈夫。ちりつもで、一緒にやっていきましょうね。

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この記事をお届けした人

栄養カウンセラー ちあき

ちあき(小森 千明)
元・特別支援学校教諭 | 栄養カウンセラー
── ライフコーディネーターとして、ご家族の食卓と、毎日の選択の隣にいます

特別支援学校の教員でした。教えていたのは、音楽です。言葉にならない声を、聞き取る仕事でした。その聞き取り方を、いちばん近いところで試されたのが、わが子の子育てです。

メロディーは、その人のもの。私が変えるのは、リズムのほう。

小児外科専門医のクリニックで、栄養カウンセリングを重ねてきました。いまも毎日、現場にいます。

弘前大学 教育学部 障害児教育課程卒。特別支援学校教諭一種免許(知的障害・肢体不自由・病弱)、中学校・高校 音楽教諭一種免許。オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート(ONE)認定。『7つの習慣®』実践会認定ファシリテーター。3児の母。

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ちあき|こどもの栄養カウンセラー×3児の母🌱 @LifeCrescendoC