抱っこで腱鞘炎・腰痛にならないコツは?赤ちゃんを楽に抱く方法と、おんぶのすすめ

栄養カウンセラー ちあきこの記事を書いた人
栄養カウンセラー ちあき
小児外科専門医 小森広嗣 監修

荷物を持っているときに限って「抱っこ〜」。寝かしつけで1時間ゆらゆら。気づけば手首がズキッ、腰がギクッ……。毎日のことだからこそ、体のどこかに少しずつ負担がたまっていきますよね。

先にお伝えすると、抱っこの負担は、「赤ちゃんを自分の体に近づけて、腕を曲げる」だけで、ぐっと軽くなるんです。 そして、抱っこする人が楽なとき、赤ちゃんもいちばん安心します。お母さん・お父さんの体を守る抱き方を、一緒に見ていきましょう。

この記事でわかること

  • 手首・腰に負担がかかる抱き方のチェック
  • 楽に抱っこするコツ(近づける・腕を曲げる・あずける)
  • 抱っこひもの高さ、股関節にやさしい抱き方、おんぶのよさ

あなたの抱っこ、負担がかかっていない?

まずは、いつもの抱っこを思い出してみてください。ひとつでも当てはまったら、体に負担がかかっているサインです。

  • 赤ちゃんと自分の体のあいだに、すき間がある
  • 遠くから、腕を伸ばしたまま「よいしょ」と持ち上げている
  • 授乳や横抱きのとき、手首だけで赤ちゃんの頭を支えている
  • 赤ちゃんがのけぞったとき、手首の力だけでこらえている
  • 縦抱きを、片腕だけでしている

当てはまっても大丈夫。気づけたことが、変えるチャンスなんです。

気づけたら、それがはじまり。

楽に抱っこするコツは?

赤ちゃんを近づけて、腕を曲げる

ちょっと想像してみてください。10kgのお米の袋を、道具なしで1km先の家まで運ぶとしたら——腕をまっすぐ伸ばしたまま運びますか? それとも、袋を体に引き寄せて、腕を曲げて運びますか?

きっと、引き寄せて、腕を曲げますよね。腕を伸ばしたままでは、すぐにプルプルしてしまいます。

ところが、子どもを抱き上げるときは、なぜか遠くから腕を伸ばして持ち上げてしまうんです。これが、手首や腰を痛めるいちばんの原因。抱き上げるときは、まず自分が赤ちゃんに近づいて、ひざを曲げて腰を落とし、赤ちゃんを体に引き寄せてから、腕を曲げて持ち上げる。これだけで、体への負担はずいぶん変わります。

てこの原理で考えると、わかりやすいんです。支える場所(肩・ひじ)と、重さ(赤ちゃん)が近いほど、力は少なくてすみます。

近づけて、腰を落として、腕を曲げて。

体をあずける

もうひとつ想像してみましょう。お米の袋を抱えたまま、座らなければいけないとしたら? 背もたれに背中をつけて、ひじかけにひじをのせて、できれば足も台にのせて——体ぜんぶを椅子にあずけるのがいちばん楽ですよね。

抱っこも同じです。授乳や寝かしつけで長く抱っこするときは、背もたれやクッションに体をあずけて、腕の下にもクッションを入れてみてください。力が1か所に集まると、そこが痛みます。物にも、人にも、力を分けていいんです。

ひとりで抱えない。物にも、人にも、あずける。

抱っこひもは、どの高さがいい?

抱っこひもは、赤ちゃんを「ぶら下げる」ものではなく、お母さんと赤ちゃんをサンドイッチして、体をぴったり寄りそわせるものなんです。

ちょうどいい高さの目安は、赤ちゃんのおでこに、チュッとキスできる高さ。位置が低いと、赤ちゃんの重さが下に引っぱられて、肩や腰にずっしりきます。ベルトの長さを調整して、すき間なく体に近づけてみてください。お母さんが楽な位置は、赤ちゃんにとっても落ち着く位置です。

安全のために、これも覚えておいてくださいね(消費者庁)。

  • 前かがみになるときは、必ず手で赤ちゃんを支える(物を拾うときは、ひざを曲げて腰を落とす)
  • 抱っこひもの着け外しは、低い姿勢で
  • 留め具やベルトがゆるんでいないか確かめる
  • 赤ちゃんの顔が、大人の体に強く押しつけられていないか、ときどき息を確かめる

おでこにチュッとできる高さで、すき間なく。

股関節にやさしい抱き方は?

赤ちゃんの脚は、ひざと股関節がしっかり曲がって、外側に開いた「M字」の形が自然な姿勢です。

抱っこは、正面から向かい合って、赤ちゃんがお母さん・お父さんの胸にしがみつくような形の「コアラ抱っこ」がおすすめ。正面抱きの抱っこひもで、脚がM字になっていれば大丈夫です。反対に、脚をまっすぐ伸ばしたまま閉じるような抱き方や、きつい服・おむつは避けましょう。横抱きのスリングは、脚が伸びやすいので注意が必要です(日本整形外科学会・日本小児整形外科学会)。

股関節のことが気になるときは、1か月や3〜4か月の健診で相談してみてくださいね。

脚は、M字。コアラのように。

おんぶって、いいの?

私は、おんぶをおすすめしたいんです。

おんぶは、お母さんの両手が自由になります。 泣いて泣いてどうしようもないけれど、ごはんの支度をしたい——そんなとき、背中にいてくれると安心ですよね。前に抱っこするより、目の前と足もとがよく見えるのも、おんぶのいいところ。何かを落としたとき、地震のときにも、足もとが見えるのは心強いんです。

そして、おんぶでは、子どもが自分からしがみつくので、力が分散されて、親の体も楽に感じることが多いんです。子どもにとっても、お母さんと同じ高さの目線で世界を見られる、わくわくする場所。

わが家では、下の子のとき、さらし(兵児帯〈へこおび〉のような長い一枚布)で抱っこやおんぶをしていました。巻き方を覚えるまでは大変でしたし、外で巻くのは難しかったけれど、体にぴったり沿うので肩こりがなくて、子どももよく眠ってくれたんです。布1枚あればできるので、いざというときにも心強いんですよね。

両手が空いて、子どもは世界をのぞける。

大きくなってからの「抱っこ〜」は?

2〜3歳を過ぎると、体重も増えて、持ち上げての抱っこは体にこたえますよね。

でも、「抱っこ〜」は、安心がほしいというサインなんです。外の世界でがんばって、体も心もへとへとになった子が、いちばん安全な場所に戻ってきて、安心を充電している。だから、持ち上げなくても大丈夫。しゃがんでぎゅっとハグする、頭をなでる、ひざの上にのせる。それで、ちゃんと満たされます。

体を動かしたい子には、遊びにしてしまうのもおすすめ。ぎゅっと抱きしめて「抜け出せるかな?」の脱出ゲームをしたり、大人が四つんばいになって、お腹に子どもをしがみつかせて「お猿の親子」で進んだり。いつもは「抱っこ〜」の子が「もう抱っこしないで〜!」と笑い転げて、満足そうな顔になるんです(笑)。

持ち上げなくても、ハグで満たされる。

はじめての抱っこが、こわいときは?

私は特別支援学校の教員になったとき、はじめて、脳性まひのあるお子さんを抱っこしました。「けがをさせたらどうしよう」「経験の浅い私が抱っこしていいの?」——不安でいっぱいでした。でも、知識を深めて、毎日抱っこを重ねるうちに、少しずつ「大丈夫」になっていったんです。

生まれたばかりの赤ちゃんも、同じです。こわごわ抱っこすると、その不安は赤ちゃんにも伝わって、かえって泣いてしまうこともあります。まずは大人が、楽で安定する姿勢で。首がすわるまでは、頭と首をしっかり支えて、体をぴったり寄せて。授乳やおむつ替えのたびに抱っこを重ねるうちに、手が覚えていきますよ。

大人が安心すると、赤ちゃんも、ふしぎと安心してくれるんです。

大人が楽で安心な姿勢から。

ここまでできていれば、大丈夫です

  • 抱き上げるときは、近づいて、腰を落として、腕を曲げている
  • 授乳や寝かしつけで、背もたれやクッションに体をあずけている
  • 抱っこひもは、赤ちゃんのおでこにキスできる高さ
  • 赤ちゃんの脚は、M字(コアラ抱っこ)
  • 前かがみのときは、赤ちゃんを手で支えている

こんなときは、医療機関へ

  • 手首や親指のつけ根の痛みが続く、物をつかむと痛い、腫れている
  • 腰の痛みで動けない、脚のしびれがある

抱っこの痛みは「みんなそうだから」と我慢しがちですが、続く痛みは、整形外科で相談してくださいね。赤ちゃんの股関節や体の向きのくせが気になるときは、健診のときに聞いてみましょう。

よくある質問

抱っこはいつまでしていい?

何歳まででも、子どもが求めるうちは大丈夫です。大きくなったら、持ち上げなくても、ハグやひざの上で十分。安心を手渡すことが大切なんです。

抱っこしすぎると、抱き癖がつく?

私の母の世代は「抱き癖がつく」とよく言われていました。でも、抱っこで安心をためた子は、その安心を土台に、自分から外の世界へ出ていくと言われています。いまの安心を、たっぷり手渡してあげてくださいね。

抱っこひもの位置が低いと、どうなる?

赤ちゃんの重さが下に引っぱられて、肩や腰に負担がかかります。赤ちゃんの体も安定しにくくなるので、おでこにキスできる高さまで上げて、すき間なく合わせましょう。

腱鞘炎になってしまったら?

痛みが続くときは、無理をせず整形外科で相談してください。そのうえで、この記事の「近づける・腕を曲げる・あずける」を取り入れると、痛む場所に力が集まりにくくなります。

今日からできるワンアクション

今日は、ひとつだけ。

次に抱き上げるとき、「近づいて、腰を落として、腕を曲げて」を、ひと呼吸おいて試してみませんか。

毎日何十回もくり返す抱っこだから、小さな工夫が、未来の手首と腰を守ってくれます。抱っこは、親子のいちばん身近なタッチケア。お母さん・お父さんが楽なら、赤ちゃんもきっと、もっと安心してくれますよ。

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この記事をお届けした人

栄養カウンセラー ちあき

ちあき(小森 千明)
元・特別支援学校教諭 | 栄養カウンセラー
── ライフコーディネーターとして、ご家族の食卓と、毎日の選択の隣にいます

特別支援学校の教員でした。教えていたのは、音楽です。言葉にならない声を、聞き取る仕事でした。その聞き取り方を、いちばん近いところで試されたのが、わが子の子育てです。

メロディーは、その人のもの。私が変えるのは、リズムのほう。

小児外科専門医のクリニックで、栄養カウンセリングを重ねてきました。いまも毎日、現場にいます。

弘前大学 教育学部 障害児教育課程卒。特別支援学校教諭一種免許(知的障害・肢体不自由・病弱)、中学校・高校 音楽教諭一種免許。オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート(ONE)認定。『7つの習慣®』実践会認定ファシリテーター。3児の母。

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ちあき|こどもの栄養カウンセラー×3児の母🌱 @LifeCrescendoC