この記事を書いた人
栄養カウンセラー ちあき
小児外科専門医 小森広嗣 監修
癇癪が激しい。理由がわからないまま、不機嫌が続く。夜中に何度も泣いて起きる。「私の育て方が悪いのかな」と、自分を責めてしまうこと、ありませんか。
先にお伝えすると、癇癪や不機嫌、夜泣きの奥に、鉄が足りていないことが隠れている場合があります。鉄は、血をつくるだけでなく、気持ちと眠りを整える物質をつくるときにも使われる栄養だからです。お母さんの愛情不足のせいではありません。まずは肌にふれて落ち着かせ、そのうえで、毎日のごはんで鉄を少しずつ。今日は、その順番をお話しします。
この記事でわかること
- 鉄が足りないと、気持ちや眠りにどう出るのか
- 赤ちゃん・2〜3歳・小学生の、年齢別に食卓でできること
- 鉄のパウダーやシロップとの付き合い方と、医療機関に相談する目安
鉄分不足で、なぜ癇癪や不機嫌が出るの?
鉄というと「貧血」を思い浮かべますよね。でも鉄には、もう一つ大切な役目があります。脳の中で、やる気や集中を支える物質(ドーパミン)や、気持ちを落ち着かせる物質(セロトニン)をつくるときにも、鉄が使われるんです。
だから鉄が足りないと、こんな形で出てくることがあります。
- 理由なく不機嫌なことが多い、癇癪が激しい
- 疲れやすく、ごろごろしていることが多い
- 集中が続かない、遊びがすぐ途切れる
- 夜中に何度も起きる、足がむずむずして眠りにくそう
- 顔色や唇が白っぽい、氷など食べ物でないものを口に入れたがる
もちろん、癇癪や夜泣きの理由は、鉄だけではありません。眠りのリズム、お腹の調子、その子の気質、成長の段階。いくつもが重なっています。鉄は、その中の見落としやすい理由の一つなんですよね。
鉄は、血だけでなく、気持ちと眠りの材料にもなる。
泣いている・荒れているときは、まず「ふれる」
深夜2時。抱っこしても、おっぱいをあげても、泣きやんでくれない。腕の中のわが子を前に、途方に暮れて立ち尽くす——。あの孤独な夜の気持ち、私も何度も経験してきました。うちの子は、本当によく泣き、なかなか寝ない子でした。
食事を整えるのは、明日からでも大丈夫。泣いている、キーッとなっている「いま」は、まず高ぶった気持ちに、そっと寄りそうところから始めます。
| どこに | ふれ方 |
| 頭 | 「大丈夫だよ」と心で唱えながら、上から下へ、ゆっくりなでる |
| 背中 | 肩甲骨のあたりからお尻に向かって、ゆーっくりなで下ろす。急ぐと逆に興奮するので「のーんびり」 |
| 太もも | 赤ちゃんのむちむちの太ももを、両手で包み込むように |
| 肩甲骨の間 | 夜泣きで起きたときは、指でやさしくくるくる |
大切なのは、テクニックより、「あなたの気持ち、ちゃんとわかっているよ」と伝える心です。子守唄を歌いながらでもいいんです。
まず、ふれて落ち着かせる。食卓は、そのあとで。
年齢別に、食卓で鉄をどうとる?
赤ちゃん(生後6か月ごろ〜離乳食)
赤ちゃんは、お母さんのお腹の中で鉄を「貯金」して生まれてきます。でも、体がぐんと大きくなる生後6か月ごろには、その貯金が減ってきます。母乳は赤ちゃんにとって最高の栄養ですが、鉄の量は多くありません。だからこそ、このころに始まる離乳食で、上手に鉄を補っていくことが大切です。これは、お母さんのせいではなく、成長の自然な流れです。
赤身の魚、鶏や牛のひき肉、卵黄、ほうれん草や小松菜のペーストなどを、月齢に合わせて少しずつ。初めての食材は、少量から始めてください。アレルギーが心配でも、自己判断で始めるのを遅らせずに、かかりつけの先生と相談しながら進めましょう。
2〜3歳(イヤイヤ期・好き嫌いが出るころ)
自己主張が強くなり、癇癪も増えやすい時期です。好き嫌いも出てきて、お肉やお魚を嫌がる子もいますよね。
食べやすい形にするのが近道です。ひき肉のそぼろや肉団子、ツナや鮭のおにぎり、卵焼きに青菜を混ぜる、おみそ汁にあさりや冷凍ほうれん草をパラパラ。きなこも鉄をふくむ食材なので、ヨーグルトやおもちにかけるのもおすすめです。
小学生(体も心もぐんと伸びるころ)
運動量が増え、体も大きくなるので、鉄の必要量も増えていきます。朝ごはんがパンだけ、おやつがお菓子だけ、という日が続くと、鉄はなかなか足りません。
かつおやまぐろ、牛の赤身、卵を、毎日の食卓のどこかに。給食のない休みの日は特に、お昼ごはんにたんぱく質が入っているかを見てみてください。
赤ちゃんは離乳食で、2〜3歳は食べやすい形で、小学生は毎日の食卓のどこかに。
鉄の吸収をよくする組み合わせ
食べ物の鉄には、2種類あります。お肉やお魚に多い、体に吸収されやすい「ヘム鉄」と、青菜や大豆、海藻に多い、吸収されにくい「非ヘム鉄」です。まずは、お肉やお魚を食卓の主役に。そのうえで、組み合わせで吸収を助けます。
| 組み合わせ | 例 |
| お肉・お魚 + ビタミンC | 牛ひき肉のそぼろ + ブロッコリー、かつお + ピーマン |
| 青菜・大豆 + たんぱく質 | ほうれん草 + 鶏ささみ、小松菜 + 卵 |
| 食後の飲み物 | お茶やコーヒーは、食事の直後を少し避ける |
レバーは「鉄の王様」ですが、風味が苦手な子(と大人)も多いですよね。私も苦手です(笑)。ビタミンAも多いので、毎日たくさんではなく、少量を時々で十分です。無理せず、ほかの食材でいきましょう。
そして、鉄だけでなく、体をつくるたんぱく質と、味覚や免疫に関わる亜鉛も、一緒に働く仲間です。お肉・お魚・卵・大豆をそろえると、自然にそろっていきます。
主役はお肉とお魚。ビタミンCを添えて。
わが家の、ひとつの経験
鉄を意識して、毎日の食卓に赤身や卵、青菜を少しずつ取り入れるようになってしばらくして、あのなかなか寝なかったうちの子が、朝こう報告してくれたことがあります。
「お母さん、おはよう! 僕、きのう11時間も寝れたよ!」
もちろん、これはわが家のひとつの経験で、鉄だけのおかげとは言えません。でも、「しつけの問題なのかな」と悩んでいたわが子の様子を、「栄養」という新しい目で見つめ直せたことで、母親として、少し肩の荷が下りたのを覚えています。
ここまでできていれば、大丈夫です
- 癇癪や夜泣きを、自分の育て方のせいだけにしなくなった
- 泣いている・荒れているとき、まず肌にふれて落ち着かせられた
- 赤身の魚や肉、卵、青菜のどれかが、毎日の食卓にある
- お肉やお魚に、ビタミンCの野菜を添えてみた
こんなときは、医療機関で相談を
次のようなときは、ご家庭だけで抱えずに、医療機関で相談してください。
- 顔色や唇が白っぽい、まぶたの裏が白い
- 氷や土など、食べ物でないものを口に入れたがる
- 離乳食がほとんど進まない、体重が増えない
- いびきがひどい、眠っている間に呼吸が止まるように見える
- 急に様子が変わった、ぐったりしている
鉄が足りているかどうかは、医療機関で確かめられます。
よくある質問
2歳・3歳の癇癪も、鉄分不足が関係しますか?
関係していることもあります。2〜3歳は、自己主張が強くなる成長の時期で、癇癪が増えるのは自然なことでもあります。そのうえで、お肉やお魚を食べない、顔色が白っぽい、疲れやすいといった様子が重なるときは、毎日の食卓の鉄を見直してみてください。
鉄のパウダーやシロップは、使ったほうがいいですか?
鉄は、足りないのも困りますが、多すぎても体の負担になる栄養です。パウダーやシロップ、サプリメントは、自己判断で使わずに、医師に相談してからにしましょう。まずは、毎日のごはんからが基本です。
鉄と一緒に、亜鉛も大事ですか?
はい。亜鉛は、味覚や免疫、成長に関わる栄養で、鉄と同じく、お肉やお魚、卵、大豆に多くふくまれています。たんぱく質の食材をそろえると、鉄も亜鉛も一緒にとれます。
夜泣きに、きなこはいいですか?
きなこは、大豆からできていて、鉄をふくむ食材です。ヨーグルトやおもちにかけて、手軽に足せるのがいいところ。ただ、植物の鉄は吸収されにくいので、お肉やお魚と組み合わせて、食卓全体で考えてくださいね。
今日からできるワンアクション
今日は、ひとつだけ。
今夜、子どもが眠る前に、背中をゆっくりなで下ろしてみませんか。 そして明日のおみそ汁に、冷凍ほうれん草をひとつかみ。
完璧な親なんて、どこにもいません。私も失敗ばかりです。まずは、頑張りすぎているご自身の体も、おいしいもので労ってあげてくださいね。お母さんの心が満たされれば、その温かさは、きっとお子さんにも伝わります。ちりつもで、一緒にやっていきましょうね。
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LifeCrescendo が目指しているのは、困りごとが消えることだけではありません。栄養で体と心の土台を整え、その先で、子どもとご家族が「楽しく生き続ける」ところまで、一緒に歩むこと。いまの困りごとから、1つ、2つずつで大丈夫です。(私たちが大切にしていること)
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この記事をお届けした人

ちあき
心と体の栄養カウンセラー | ライフクレッシェンド株式会社 代表
── ライフコーディネーターとして、ご家族の食卓と、毎日の選択の隣にいます
特別支援学校の教員でした。教えていたのは、音楽です。言葉にならない声を、聞き取る仕事でした。その聞き取り方を、いちばん近いところで試されたのが、わが子の子育てです。わが子の発達に悩み、「私の愛し方が足りないのだろうか」と自分を責めた日々もありました。転機は、体の土台を整える「栄養」でした。
メロディーは、その人のもの。私が変えるのは、リズムのほう。
小児外科専門医のクリニックで、子どもと家族の栄養カウンセリングを重ねてきました。いまも毎日、現場にいます。2019年の秋からは、地域の親子ひろばなどで、ベビーマッサージ・タッチケアの教室も開いています。
弘前大学 教育学部 障害児教育課程卒。特別支援学校教諭一種免許(知的障害・肢体不自由・病弱)、中学校・高校 音楽教諭一種免許。オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート(ONE)認定。『7つの習慣®』実践会認定ファシリテーター。3児の母。
▼ 日々の気づきは、Xで
ちあき|こどもの栄養カウンセラー×3児の母🌱 @LifeCrescendoC
