家族の「信頼口座」の育て方。「なんで分かってくれないの?」が減っていく、『7つの習慣』の6つの預け入れ

栄養カウンセラー ちあきこの記事を書いた人
栄養カウンセラー ちあき
小児外科専門医 小森広嗣 監修

「良かれと思って言ったのに、なぜか相手が不機嫌」「『またその話?』と、ため息で会話が終わってしまう」。家族と、そんなふうに心がすれ違う瞬間、ありますよね。

私もそうでした。「脱いだ靴下、またここ!」「部屋を片付けなさい!」と、気づけば指示と注意ばかり。家の空気が、なんだかギスギスしていたんです。そのすれ違いの理由が、『7つの習慣』の「信頼口座」という考え方を知って、すとんと腑に落ちました。

先にお伝えすると、信頼は、大きな出来事より、毎日の小さな関わりで貯まっていくものです。そして、引き出してしまっても、また貯め直すことができます。

この記事でわかること

  • 「信頼口座」とは何か。近い関係ほど、引き出しが増えやすい理由
  • いちばんの預け入れが「口を挟まずに聞く」ことである理由
  • 毎日できる6つの預け入れと、引き出してしまったときの立て直し方

「信頼口座」とは。人との関係を、銀行の口座にたとえる考え方

『7つの習慣』では、人との関係を、銀行の口座にたとえます。お金を預けたり引き出したりするように、私たちの関係にも、日々の関わりで「信頼」を貯めたり(預け入れ)、使ってしまったり(引き出し)する、目に見えない口座がある、という考え方です。

たとえば
預け入れ「ありがとう」を伝える/約束を守る/口を挟まずに話を聞く/誠実に接する
引き出し約束を破る/話を最後まで聞かずに決めつける/その場にいない人の悪口を言う/失礼な態度をとる

気をつけたいのは、近い関係ほど、無意識の引き出しが増えやすいことです。久しぶりに会う友人には丁寧に接するのに、毎日顔を合わせる家族には「言わなくてもわかるでしょ?」と甘えてしまう。

冒頭の「靴下、またここ!」も、まさに引き出しでした。言われた夫は「いつも口うるさいな」と感じ、私の中では「どうしてやってくれないの」という不満がたまる。これでは、お互いの残高が減っていく一方ですよね。

家族の間にも、目に見えない「信頼の口座」がある。

わが家で、信頼がマイナスになった日

この考え方が身にしみたのは、私自身の失敗からでした。

ある日の午後、うちの子が「この宿題が終わったら、アイス買ってくれる?」と言ってきました。夕飯の準備で頭がいっぱいだった私は、「はいはい、わかったから、早く宿題やっちゃいなさい」と、生返事で約束してしまったんです。

うちの子は大喜びで宿題をやり遂げました。でも、その頃には外も暗くなり、私もすっかり疲れていて……。「ごめん、もうこんな時間だから、アイスはまた今度ね」。

返ってきたのは、胸に刺さる一言でした。「……やっぱりね。どうせママは、いつもそうだよ。約束守ってくれないから、もう頼まない」。

信頼がゼロどころか、マイナスになった瞬間でした。『7つの習慣』には「愛は動詞である」という考え方があります。愛は、ふわふわした気持ちだけではなく、毎日の行動の積み重ね。そして行動の手前には、いつも「選択」があり、選択には責任がともないます。「アイスを買ってあげる」という小さな約束も、私の選択だったんですよね。

小さな約束も、ひとつの選択。言ったことを、やる。

いちばんの預け入れは、「口を挟まずに聞く」こと

『7つの習慣』が、いちばん大切な預け入れとして挙げているのが、「口を挟まず、黙って話を聞いてやること」です。この一文を読んだとき、私はドキッとして、思わず本を閉じてしまいました。「それができたら苦労しないのに……!」と(笑)。

うちの子が深刻な悩みを話してくれたとき、私は「こうすればいいよ」と、矢継ぎ早にアドバイスを始めていました。助けてあげたい、解決してあげたい。その気持ちがあるからこそ、すぐに口を挟んでしまうんです。でも、相手からすれば、私の度数の合わないメガネを、無理やりかけさせられているようなもの。あのとき欲しかったのは、解決策ではなく、「わかってもらえた」という安心だったのだと、あとから気づきました。

ポッドキャストで、こんなたとえ話をしたことがあります。「あなた、紫が好きでしょ? だから紫のお花、買ってきたわよ!」。こんなふうにプレゼントを渡されたら、ちょっと「うーん……」となりますよね。どうすればよかったのか。答えはシンプルで、ただ「何色が好き?」と聞けばよかったんです。

長く一緒にいると、つい「もう知ってるし」「どうせこうでしょ」と、聞くことをおろそかにしてしまいます。そんなときの私のコツは、初めて会ったころのときめきを思い出すこと。あのころは、相手の好きなものも考えていることも、全部知りたくて、夢中で耳を傾けていましたよね。

アドバイスより先に、まず聞く。「分かったつもり」を手放す。

毎日できる、6つの預け入れ

ここからは、『7つの習慣』に学ぶ6つの預け入れを、わが家での形でご紹介します。

預け入れわが家での形
1相手を理解する相手の「好き」に、一緒に入ってみる
2小さなことを気遣う当たり前のことに「ありがとう」を添える
3約束を守る守れないときは、先に「できない」と伝える
4期待を、くっきり伝える「ちゃんと」ではなく、具体的なお約束にする
5誠実さを示す言ったことをやる。その場にいない人を悪く言わない
6引き出したら、心から謝る言い訳をせずに「ごめんね」

1. 相手を理解する——相手の「好き」に、一緒に入ってみる

相手が大切にしていることを、自分も大切にしてみることです。うちの子が夢中になっているアニメがあれば、「どこがいちばん面白かった?」と、その世界に一緒に入ってみる。夫は飛行機が好きなので、「好きなんだね」で終わらせずに、一緒にパイロットの映像を見て「へえ、こんな世界があるんだ」と楽しんでみる。相手の「好き」を一緒に喜ぶ時間が、信頼を育てます。

2. 小さなことを気遣う——当たり前に「ありがとう」を

「カーテン開けてくれて、ありがとう」「お皿を洗ってくれて、ありがとう」「今日もお仕事、お疲れさま」。大きなプレゼントより、毎日の小さな気遣いが心を満たします。

先日、コンビニで、若い女性がドアを開けたまま、私が出るのをにこやかに待っていてくれました。自動ドアが当たり前の今、その何気ない親切が胸にじんわり染みて。人の心を温めるのは、特別なことではないんですよね。

言葉にならない「大好き」を伝えるスキンシップも、すてきな預け入れです。おはようのハグ、いってらっしゃいのハイタッチ。触れ合いの「あい」は、愛。タッチケアでいつもお伝えしていることです。

3. 約束を守る——守れないときは、先に「できない」と

あの日の失敗から、私は約束のしかたを変えました。「宿題がんばるから、アイス買ってきて!」と言われても、帰りに忘れてしまいそうな日は、正直にこう伝えます。「ごめんね、今日は無理なんだ。でも、土曜日なら早く帰れるから、一緒に買いに行こうか」。

最初は不満そうだったうちの子も、だんだん「わかった」と納得してくれるようになりました。守れない約束をしない勇気も、信頼につながります。そして、一度「やる」と決めた小さな約束は、何よりも大切に守る。約束を守れたとき、子どもが受け取るのはアイスだけではなく、「お母さんは、ぼくとの約束を大切にしてくれる」という安心なんです。

4. 期待を、くっきり伝える——「ちゃんと」をやめてみる

以前の私は、「ちゃんとお部屋、きれいにしてね!」という、ふんわり言葉の達人でした。そして、床におもちゃが転がっているのを見ては「なんできれいにしないの!」とイライラ。でも、子どもにしてみれば「ぼくなりに、きれいにしたのに」。お互いの「ちゃんと」の物差しが、違っていたんです。

「部屋をきれいに」ではなく、「床に落ちているゴミは、ゴミ箱に捨てるのがお約束だよね」。こうして一緒に具体的なお約束を決めると、子どもは何をすればいいかがわかります。わが家では、洗濯物を干す、犬のお世話、カーテンの開け閉め、と一人ひとりの役割を決めています。役割があると、「家族の一員として必要とされている」と感じられるんですよね。

5. 誠実さを示す——言ったことをやる。その場にいない人を悪く言わない

「明日からダイエットする!」と宣言した次の日に、「クッキー1枚くらいなら……」と手を伸ばしてしまう私(笑)。誰も見ていなくても、自分との約束を破っていることになります。誠実さとは、自分の言葉に、行動を合わせることなんですね。

もう一つ、私が胸に刻んでいるのが、「その場にいない人の悪口を言わない」ことです。子どもが学校の先生への不満をこぼしたとき、つい同調したくなります。でも、親が誰かの陰口を言う姿は、「見ていないところでは、何を言ってもいい」というメッセージになってしまう。誰に対しても同じ態度でいることが、揺るがない信頼の土台になります。

6. 引き出したら、心から謝る——言い訳をせずに「ごめんね」

うっかり約束を破ったり、口を挟んで傷つけてしまったり。引き出してしまったときは、言い訳をせずに、心から謝ることが、いちばんの立て直しです。「だって忙しかったんだもん」と言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、「ごめんね、約束守れなかった」。

わが家で、下の子が上の子の大切なものを壊してしまったことがありました。最初は「ぼくじゃない!」と言い張っていた下の子が、最後に「ごめんね」と言えたとき、怒っていた上の子の気持ちが、すっと溶けたように見えました。謝ることは、負けではないんですよね。

カッとなりそうなときは、反応する前に、心の中に数秒の「間」を置いてみてください。「刺激と反応のあいだには、選べるスペースがある」。これも『7つの習慣』の教えです。その数秒が、あとで謝ることそのものを減らしてくれます。

預け入れは、毎日の小さなこと。引き出したら、言い訳せずに「ごめんね」。

ここまでできていれば、大丈夫です

  • 家族の間にも「信頼の口座」がある、とイメージできた
  • 話を聞くとき、アドバイスの前に一度、口を閉じてみた
  • 当たり前のことに「ありがとう」を添えてみた
  • 守れない約束は、先に「できない」と伝えられた
  • 引き出してしまったとき、「ごめんね」と言えた

よくある質問

信頼口座の残高が、もうマイナスな気がします

大丈夫です。私もマイナスにしたところから始めました。残高は、毎日の小さな預け入れで、また少しずつ戻っていきます。まずは「ありがとう」を一つ、今日伝えるところから始めてみてください。すぐに結果が出なくても、土を耕して水をやるように、続けたぶんだけ関係は育っていきます。

夫婦の間でも使えますか

使えます。「信頼口座」は、親子に限らず、夫婦や職場など、すべての人間関係に当てはまる考え方です。とくに夫婦は近い関係なので、引き出しが増えやすいもの。相手がしてくれたことに「ありがとう」を伝えるところから、試してみてください。

子どもの話を、つい途中でさえぎってしまいます

私もです(笑)。完璧に聞けなくて大丈夫です。気づいたときに、「ごめん、最後まで聞くね」と言い直すだけでも、立派な預け入れになります。聞き方のステップは、子どもの話の聞き方の記事にまとめています。

今日からできるワンアクション

今日は、ひとつだけ。

今夜、家族のだれかに、いつもの「当たり前」に「ありがとう」を一つ添えてみませんか。 「お皿、運んでくれてありがとう」。それだけで、口座にチャリンと一枚、預け入れができます。

完璧な親や、完璧なパートナーなんて、どこにもいません。私も、毎日「また引き出しちゃった」の連続です。でも、失敗するたびに学んで、家族と一緒に成長していけばいい。ちりつもで、一緒にやっていきましょうね。

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LifeCrescendo が目指しているのは、困りごとが消えることだけではありません。栄養で体と心の土台を整え、その先で、子どもとご家族が「楽しく生き続ける」ところまで、一緒に歩むこと。いまの困りごとから、1つ、2つずつで大丈夫です。(私たちが大切にしていること)

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この記事をお届けした人

栄養カウンセラー ちあき

ちあき
心と体の栄養カウンセラー | ライフクレッシェンド株式会社 代表
── ライフコーディネーターとして、ご家族の食卓と、毎日の選択の隣にいます

特別支援学校の教員でした。教えていたのは、音楽です。言葉にならない声を、聞き取る仕事でした。その聞き取り方を、いちばん近いところで試されたのが、わが子の子育てです。わが子の発達に悩み、「私の愛し方が足りないのだろうか」と自分を責めた日々もありました。転機は、体の土台を整える「栄養」でした。

メロディーは、その人のもの。私が変えるのは、リズムのほう。

小児外科専門医のクリニックで、子どもと家族の栄養カウンセリングを重ねてきました。いまも毎日、現場にいます。2019年の秋からは、地域の親子ひろばなどで、ベビーマッサージ・タッチケアの教室も開いています。

弘前大学 教育学部 障害児教育課程卒。特別支援学校教諭一種免許(知的障害・肢体不自由・病弱)、中学校・高校 音楽教諭一種免許。オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート(ONE)認定。『7つの習慣®』実践会認定ファシリテーター。3児の母。

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ちあき|こどもの栄養カウンセラー×3児の母🌱 @LifeCrescendoC