子どもの便秘は、いつまで続く? 4年間、土の中で根を張る「竹」のたとえ話

この記事は、小児外科専門医・小森広嗣による寄稿です。医師個人の経験と考えとして書いています。

竹は、4年間なにもしていないように見える

こんな話を聞いたことがあるでしょうか。

ある竹は、種を蒔いてから4年間、ほとんど何も起きないのだそうです。小さな芽が顔を出すだけで、背は伸びない。水をやり、肥料をやり、毎日見に行っても、昨日と同じ。

ところが5年目のある時期、その竹は、わずか数週間で見上げるほどの高さまで伸びる。

では、最初の4年間、竹は何をしていたのか。土の中で、根を張っていたのです。地面の下に、何年分もの根を広げていた。だから5年目に、一気に伸びても倒れない。

自己啓発の本や講演でよく語られる「中国の竹」のたとえ話です。植物学として正確かどうかは、ここでは脇に置きます。ただ、たとえ話としては、とてもよくできています。

私が初めてこの話を聞いたとき、すぐに思い浮かんだのは、便秘の治療を続けているご家族の顔でした。

「いつまで続くんだろう」と思う夜

子どもの便秘の治療は、地味です。

毎日、決まった時間にトイレに座る。飲み薬を続ける。必要なら、浣腸を使う。出た日も、出なかった日も、また次の日がやってくる。

最初の数週間は、変化が見えやすいものです。溜まっていたものが出て、お腹が楽になる。ところが、そのあとに長い平らな道が続くことがあります。

薬を減らすと、また出にくくなる。トイレには座るけれど、自分から「行きたい」とは言わない。周りの子はとっくに一人でできているのに、うちの子だけ、まだここにいる。

「いつまで続くんだろう」

便秘の診療をしていると、ご家族からこの言葉を何度も伺います。そう思うのは、当然のことです。毎日続けている人ほど、変化のなさがこたえるのです。

見えない時期に、お腹の中で起きていること

けれども、竹の4年間と同じで、表から見えないあいだも、体の中では仕事が進んでいます。

長く便が溜まっていたお腹では、腸の出口の手前(直腸)が、伸びきったゴム風船のようになっています。風船は、中身を出しても、すぐには元の張りに戻りません。張りが戻らないと、「便が来たよ」という合図(便意)も、うまく脳に届きません。

この風船が、少しずつ縮み、合図の感度を取り戻していく。それには時間がかかります。そして、その変化は外からは見えません。

もうひとつ、排便は、身につけていく力です。自転車や水泳と同じで、毎日の練習の積み重ねで、少しずつ体が覚えていきます。昨日と今日の差は見えなくても、半年前と比べると、確かに違っている。そういう育ち方をするものです。

飲み薬や浣腸は、この練習を支える補助輪のようなものです。補助輪をつけて走っている時間は、「まだ外せない時間」ではありません。自分の力で走るための根を張っている時間です。いつ、どう外していくかは、主治医と相談しながら決めていけば大丈夫です。

根を張る期間は、子どもによって違う

竹の根が何年かかるかは、土や気候によって違うでしょう。子どもも同じです。

数か月で落ち着く子もいます。何年かかかる子もいます。それよりもう少し長くつきあう子もいます。どれも、珍しいことではありません。 早いから良い、遅いから悪い、という話ではないのです。

隣の竹がもう伸びているからといって、自分の竹を引っぱっても、根は育ちません。比べたくなる気持ちは自然なことですが、見てほしいのは、その子自身の半年前です。

土を耕すのは、毎日の暮らし

竹の根を育てるのは、土です。

子どもの体でいえば、その土にあたるのが、毎日の食事と、眠りと、体を動かすことです。腸は、体の土台です。食べたものが材料になり、よく眠ることで整い、よく動くことでお腹も動きます。

治療を続けながら、この土を少しずつ耕していく。大きなことをする必要はありません。今日の食卓に一品、明日の夜に少し早い布団。そういう小さなことの積み重ねが、根の張り方を変えていくのです。

ある日、ふっと伸びる

続けていると、ある時、ふっと変わる日が来ることがあります。

自分から「トイレ行ってくる」と言った。補助輪を一つ外しても、なんとかなった。そういう日は、たいてい、劇的な音を立ててはやって来ません。気づいたら、そうなっている。振り返ってみて、「あの頃から根が張っていたんだな」と分かるのです。

そして、その変化を一番近くで支えてきたのは、毎日トイレにつきあい、出なかった日にも次の日をまた始めてきた、ご家族です。

竹の話でいちばん大切なのは、5年目に伸びたことではありません。伸びる前の4年間、誰かが水をやり続けたことです。

こんなときは、医療機関へ

便秘に加えて、吐く、お腹がひどく張っている、強く痛がる、便に血が混じる、体重が増えない・減っている。こういうときは、様子を見ずに医療機関に相談してください。

治療中に「このままでいいのかな」と迷ったときも、ひとりで抱えずに、主治医に今の様子を伝えてみてください。見通しを一緒に確かめることも、治療の大事な一部です。

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この記事を書いた人

小森広嗣(こもり こうじ)
小児外科専門医・医学博士

子どものお腹と栄養を、腸のつくり(構造)と、体のはたらき(機能)の両方から見ている臨床医です。