診察の数分に、入らないこと ── なぜ、診察室の外に学びの場をつくったのか

はじまりは、診察室です。小児外科専門医として、薬だけでは解決しない不調に、栄養の視点から向き合ってきました。

 

けれど、診察の時間は数分です。「なぜ腸から始めるのか」「なぜこの順番が大切なのか」「ご家庭でどう実践すればいいのか」——本当に大事な話ほど、診察室の時間には収まりませんでした。

 

これは、どこかの医療機関が足りないという話ではありません。医療は、診断をつけ、治療を届けるために設計されています。そしてその設計は、必要なときに確かに働きます。ただ、診断がついて方向が決まったあとの——「では、これをどう続けていくのか」。ここを伝える時間までは、いまの仕組みの中に用意されていません。健康な体を保つことには、教育が要ります。それは治療とは別の営みで、別の時間が必要でした。

 

情報はあるのに、届かない

 

かわりに、情報はあふれています。ダイエットも、次々に出てくる健康法も、同じです。方法はいくらでも見つかりますし、どれも、それ自体が間違っているわけではないのだと思います。ただ、「うちの子には、どれが合うのか」「わが家は、どの方向へ進めばいいのか」——その一点だけが、どこにも書かれていません。だから、調べる時間ばかりが増えていきます。足りないのは情報ではなく、わが家の順番なのです。

 

そのいちばん暮らしに近い問い——「家では、どうすれば」——を、カウンセリングの部屋で受け止めてきたのが、栄養カウンセラーのちあきです。献立のこと、声かけのこと、続かない日のこと。実践の答えには、医学の言葉だけでなく、生活の言葉が必要でした。

 

LifeCrescendoは、その「伝えきれなかった部分」を、医学と生活の両方から届けるために生まれた、栄養療法の学びの場です。医学と原則を小森が、生活と共感をちあきが。ふたりで、ご家庭の実践までを支えます。

 

学びの場、と申し上げました。ただ、私たちの言う教育は、正解をお渡しして終わる授業ではありません。一緒に学び、ご家庭で試し、その結果をまた持ち寄る。この往復に、伴走します。実現していくのはご家族です。私たちは、その隣にいます。

 

体が整うと、次の問いが来ます

 

そして、体が整ってきたご家庭から、次にうかがうことがあります。「それで、この子は、これからどう生きていったらいいのでしょう」——朝、起きられるようになった。食べられるようになった。その先の話です。この子の個性を、どう活かしていけばいいのか。親である自分は、どこへ向かうのか。ご家族が本当に立ち止まられるのは、多くの場合、この段階です。

 

栄養の話から離れて見えるかもしれません。けれど、現場では地続きです。体が整うと、人は次の問いを持てるようになります。わが家は、何を大切にするのか。どんな毎日を、良い毎日と呼ぶのか。そこを一緒に見つけ、実現へ向かって並んで歩くところまでを、私たちはこの仕事だと思っています。

 

目指しているのは、完璧な食事でも、問題の起きない毎日でもありません。その子らしく、ゆとりを持って、わくわくしながら育っていくこと。そして親であるあなたも、同じようにいられること。——その道筋を一緒に描いていく場として、『わが家の設計図』という伴走もあります。

 

ガイド、Podcast、記事。診察室の外で、じっくり学び、ご家庭で実践できるところまで伴走します。医学的な判断が必要なときは、医療機関で。学びと実践の伴走は、ここで。——役割は分かれていますが、届けたいものは同じです。

 

もうひとつ、この場所ができて、ありがたく思っていることがあります。小児医療の現場で見てきたことを、通える距離にいるかどうかに関わりなく、お届けできるようになりました。近くに専門の外来があるご家庭にも、そうでないご家庭にも、学びは同じように届きます。診察室にいるだけでは、叶わなかったことです。

 

この記事は、子どもの栄養療法のページから独立させたものです。順番の考え方は私たちが大切にしていることに、まずは声から——Podcast『愛でいっぱいまるまるタッチ』