毎日、本当にお疲れ様です。赤ちゃんが生まれてからの日々は、幸せな反面、想像以上にエネルギーを使いますよね。
クリニックでお母さんたちとお話ししていると、手首にサポーターを巻いている方をよくお見かけします。また、「産後から急にシミが濃くなった気がする」と悩まれている声もよく耳にします。
「毎日抱っこしているから、手首が痛いのは仕方ない」
「ホルモンバランスの変化や、紫外線のせいだから仕方ない」
私も以前はそう思っていました。整形外科に行っても「抱っこを控えてくださいね」と言われて、「それができたら苦労しないのに…」と心の中でつぶやいたお母さんも多いのではないでしょうか。
でも実は、この「腱鞘炎」と「シミ」、どちらも体からのとっても大切なサインなんです。そしてその原因は、物理的な要因だけでなく「栄養」、特に「鉄不足」が大きく関わっているかもしれません。
なぜ鉄不足が「腱鞘炎」を引き起こすの?
私たちの体の腱や関節は、「コラーゲン」というタンパク質でできています。しなやかで強い構造を保つために、このコラーゲンが一生懸命働いてくれています。
実は、この丈夫なコラーゲンを作るためには、タンパク質だけでなく「鉄」が絶対に必要なんです。鉄とセットにならないと、しっかりとしたコラーゲンは作れません。
産後のお母さんは、出産でたくさんの血液を失い、授乳で赤ちゃんに栄養を分け与え、さらに夜間もぐっすり眠れません。つまり、極端な鉄不足に陥りやすい状態にあります。
鉄が不足すると、作られるコラーゲンが弱く、脆くなってしまいます。そのふにゃふにゃの状態で赤ちゃんを何度も抱っこするから、手首の組織が傷つきやすくなり、腱鞘炎になってしまうのです。さらに、傷ついた組織を修復する力も落ちているので、なかなか治らず長引いてしまいます。
「抱っこのしすぎ」だけではなく、「修復するための材料(鉄)が足りていない」ことが、痛みを長引かせる大きな原因だったのです。
産後の「シミ」も鉄不足のサイン?
そしてもう一つ、産後に増えがちな「シミ」。これも紫外線のせいだけではありません。
鉄が不足すると、体の細胞は「酸素が足りない!」と感じます。すると体は自分を守ろうとして、防御反応としてメラニン(シミの素)を増やしてしまうのです。
さらに、鉄が足りないと皮膚が生まれ変わるサイクルも遅くなります。本来なら外に押し出されずに済んだはずのメラニンが、肌に留まってシミとして残ってしまうのです。
私も、栄養療法に出会う前の鉄不足だった頃にできたシミを見ては、「あの時もっと鉄を補給していれば…」と悔しい思いをすることがあります。シミは、お母さんが身を削って頑張った「鉄不足の勲章」とも言えるかもしれません。でも、できれば増やしたくない勲章ですよね。
今日からできる、自分を満たす小さな一歩
「自分のことは後回しで、赤ちゃんや家族のことでいっぱいいっぱい」
「食事も簡単に済ませがちで、疲れて甘いものばかり食べてしまう」
そんなお母さんの気持ち、痛いほどよく分かります。でも、手首の痛みやシミは、体からの「お母さん、栄養が足りてないよ。もっと自分を満たしてね」という優しいサインです。
まずは、完璧を目指さなくて大丈夫です。毎日のごはんから、できることを少しずつ見直してみませんか?
1. タンパク質をしっかり摂る
お肉、お魚、卵、大豆製品など、体を作る材料となるタンパク質を意識して食べましょう。手の込んだ料理である必要はありません。ゆで卵を一つ追加する、納豆を食べるなど、簡単なことからで十分です。
2. 鉄分を意識する
レバーや赤身のお肉など、鉄分を多く含む食材を取り入れてみてください。鉄分は、お母さんの体だけでなく、母乳を通じて赤ちゃんの脳の発達にもとても大切です。お惣菜のレバー煮を買ってくるのも立派な一手です。
3. 休める時は休む(完璧を手放す)
家事は二の次で構いません。赤ちゃんがお昼寝したら、一緒にお昼寝をして体を休めましょう。睡眠ホルモンを作るのにも鉄とタンパク質が必要なので、栄養が満たされてくると、短い時間でもぐっすり眠れるようになってきます。
栄養で満たされると、心も満たされる
お母さんが栄養で満たされて元気になると、心にも余裕が生まれます。
私自身、重度の鉄不足だった頃は毎日ガミガミ怒ってばかりでした。でも、鉄が満たされてからは、怒る頻度が本当に減ったんです。「あぁ、私の性格のせいじゃなくて、ただの栄養不足だったんだ」と気づいた時のホッとした気持ちは忘れられません。
自分を責める必要はありません。栄養で満たされると、心も満たされます。お母さんがハッピーだと、子どもも家族もみんなハッピーになります。
まずは今日の食卓から、ご自身の体をいたわる習慣を始めてみてくださいね。


