師走の足音が、日増しに強くなってきました。
街はきらびやかな装飾に包まれていますが、私たちの心の中はどうでしょうか。
仕事の締め切り、子供の行事、溜まっていく家事、そして漠然とした将来への不安。
私たちの日常は、放っておけばすぐに「やらなければならないこと」という名の雑草で埋め尽くされ、心の余裕を奪っていきます。
今週のLifeCrescendoは、そんな慌ただしい12月の入り口に立った私たちが、どうすれば「心の呼吸」を取り戻し、本質的な喜びに触れられるのか。
そのヒントを、二つの視点から探求しました。
先に「吸う」のではなく、先に「吐かせて」あげる
ライフコーディネーターのちあきが直面したのは、家庭内で起きた「同時多発ピンチ」でした。
誰もが余裕を失い、「私の話を聞いて!」「俺の辛さを分かって!」と叫び合う、心の酸欠状態。
そこで彼女が見出したのは、「順序を変える」という勇気ある決断です。
自分が苦しい時こそ、まず相手に「心の酸素」を送る。自分の判断やアドバイスという眼鏡を外し、ただ相手の言葉を深く聴く。
それは一見、遠回りのように思えます。しかし、「聴く」という愛の動詞を実践した瞬間、相手の心が満たされ、巡り巡って自分自身にも新鮮な空気が戻ってくるのです。
「楽」だけを求めると、人生の味がしなくなる
一方、哲学医・小森は、「好きなことだけして生きる」という現代の風潮に、静かな問いを投げかけました。
人間国宝・坂東玉三郎氏の言葉を引用しながら、彼は語ります。人生の9割は、思い通りにならない苦しみかもしれない。しかし、その圧倒的な「苦」があるからこそ、残りの1割の「楽(喜び)」が、魂を震わせるほどの輝きを放つのだと。
喉が渇き切った時の一杯の水のように。
苦しみから逃げず、腹をくくって向き合った先にだけ、私たちは「生きていてよかった」という、清々しい幸福に出会えるのです。
カオスの中に、光はある
「聴くこと」も「苦しみと向き合うこと」も、決して楽なことではありません。
しかし、この12月の喧騒(カオス)や、日々の重圧を「避けるべき悪」とするのではなく、「光を見つけるための背景(コントラスト)」として捉え直してみる。
そう覚悟を決めた時、私たちの目には、今まで見えなかった家族の愛や、仕事の深い喜びが、鮮やかに浮かび上がってくるはずです。
今週も、誠実な旅人の皆さんと共に、この道を歩めることを感謝して。




