なぜか不機嫌で、癇癪(かんしゃく)が多い我が子。それ、”愛情不足”ではなく”体の鉄分不足”が原因かもしれません。

ライフコーディネーター | ちあき:

こんにちは!LifeCrescendo ライフコーディネーターの、ちあきです☀️

「そろそろ離乳食だけけれど、何からどう進めたらいいんだろう…」
「あんなに一生懸命作ったのに、べーっと出されちゃうと、こっちが泣きたくなる…」

かつての私自身もそうだったように、クリニックの診察室やカウンセリングの現場では、赤ちゃんの健やかな成長を願うママやパパの、そんな切実な声に、毎日のように出会います。

特にお子さんの機嫌が悪かったり、癇癪が続いたりすると、「もしかして、私の愛情が足りないせい…?」「育て方が、どこか間違っているのかな…」なんて、自分を責めてしまうこと、ありませんか?

その誠実さ、そして深い愛情があるからこそ、悩んでしまうのですよね。

でも、もし。
その尽きない悩みの原因が、あなたの”心の頑張り”や”愛情の量”とは、全く別のところにあるとしたら…?

今日は、そんな誠実なあなたにこそ知ってほしい、赤ちゃんの「体」と「心」の、とても大切な繋がりについて、私たちのチームの専門家パートナーである、哲学医にバトンタッチしたいと思います。

監修医師 / 哲学医 | 小森 広嗣:

哲学医の小森です。

ちあきさんがお話ししたように、お子さんの癇癪や不機嫌の背景に、ご自身の育て方を重ねて、深く悩んでしまう方は少なくありません。

しかし、私たち分子栄養学の視点から見ると、多くの場合、そこには「隠れ栄養失調」、特に「鉄欠乏」という、明確な”体の問題”が潜んでいます。

そもそも、なぜ離乳食は必要なのでしょうか。
私はこの時期を、「栄養のバトンタッチ」が起こる、人生の土台を作る上で最も重要な時期だと考えています。

赤ちゃんは生まれる前、お母さんのお腹の中でたっぷりの栄養、特に「鉄」を”貯金”して生まれてきます。(これを専門的には「貯蔵鉄」と呼び、主に肝臓に蓄えられます)。しかし、その貯金は、多くの研究で生後6~8か月頃には急激に減少し、枯渇に近づくことがわかっています。

爆発的に成長する赤ちゃんの体を支えるには、母乳やミルクだけでは、どうしても栄養が足りなくなってくるのです。

離乳食とは、まさにその足りなくなった栄養を、食べ物から自分の力で補うための、最初のトレーニングなのです。

この記事では、数ある栄養素の中でも、なぜこの時期に「鉄」が赤ちゃんの心と体の発達にとりわけ重要なのか。その理由を、最新のエビデンスを交えながら、深く、そして分かりやすく解説していきます。

「なぜこれが必要なのか」という本質がわかると、日々の離乳食作りが、不安な”作業”から、赤ちゃんの未来を創る”投資”へと変わっていくはずです。一緒に学んでいきましょう。

もしかして…? ご家庭でできる「鉄欠乏」のサイン・チェックリスト

以下の項目に複数当てはまる場合、鉄不足が隠れている可能性があります。

□ 顔色や唇の色が青白い、目の下のクマが気になる

□ 理由なく不機嫌なことが多く、癇癪が激しい

□ 疲れやすく、日中もゴロゴロしていることが多い

□ 集中力がなく、遊びが長続きしない

□ 食が細い、食べ物の好き嫌いが激しい(特に肉や魚を嫌がる)

□ 風邪をひきやすく、治りにくい

□ 夜中に何度も起きる、夜驚症(夜泣きとは違う、叫ぶような強い恐怖反応)がある

□ 爪が薄く、スプーンのように反り返っていることがある(スプーンネイル)

□ 氷や土など、食べ物でないものを食べたがることがある(異食症)

(※これらはあくまで目安です。気になる場合は必ず医療機関にご相談ください)

第1章:なぜ、離乳期に「鉄」が最重要なのか? ― 心と体の発達を支える、見えざる司令塔

離乳期に意識すべき栄養素はいくつかありますが、もし一つだけ挙げるなら、私は迷わず「鉄」と答えます。

鉄は、単に「血を作る材料」というだけではありません。WHO(世界保健機関)も乳幼児の鉄欠乏が発達に与える深刻な影響について警鐘を鳴らしており、心と体の両方の健やかな成長を陰で支える、まさに「見えざる司令塔」なのです。

1-1. 赤ちゃんが「鉄欠乏」に陥りやすい、避けられない3つの理由

なぜ、この時期の赤ちゃんはこれほど鉄不足になりやすいのでしょうか。それには、避けられない3つの理由があります。

  1. お母さんからもらった「鉄の貯金」が底をつく

先ほども触れましたが、赤ちゃんは肝臓などに鉄を蓄えて生まれてきます。しかし、この貯金は永久機関ではなく、生後半年を過ぎる頃には急速に消費され、在庫切れの状態になってしまいます。

  1. 母乳の鉄分は「吸収は良いが、絶対量が少ない」

母乳に含まれる鉄分は、ミルクに比べて体に吸収されやすい(吸収率約50%とも言われる)という素晴らしい特徴があります。しかし、その絶対量は1リットルあたり0.3mg程度とごくわずかです。そのため、母乳栄養児ほど、生後6か月以降は食事からの鉄分補給がより重要になります。

  1. 体の急成長で、鉄の需要が”爆増”する

赤ちゃんは、生まれてから1年で体重が約3倍にもなります。血液量も増え、筋肉も作られ、脳も急発達する。体を作るあらゆる場面で鉄は大量に必要とされます。貯金が減る一方で、支出が爆発的に増えるわけですから、外から補給しなければ不足するのは当然のことなのです。

1-2. 【分子栄養学の視点】”貧血”ではない「隠れ鉄欠乏」が、脳の発達を脅かす

血液検査でわかる「貧血(ヘモグロビン低下)」は、鉄欠乏がかなり進行した最終段階です。そのずっと手前の段階、つまりヘモグロビン値は正常でも、貯蔵鉄(フェリチン)だけが低くなっている状態を「隠れ鉄欠乏(潜在性鉄欠乏)」と呼びます。この状態でも、赤ちゃんの繊細な脳の発達には大きな影響が及ぶ可能性があることが、数多くの研究で示されています。

では、鉄が足りないと具体的に何が起こるのでしょうか。

  • 役割①:全身の細胞への”酸素供給”が滞る

鉄は赤血球のヘモグロビンの主成分として、全身の細胞に酸素を届けます。鉄が不足すると、体全体が酸欠状態になり、持久力の低下、疲れやすさ、学習意欲の低下などを引き起こします。

  • 役割②:「やる気・集中・安定」を生む”脳内ホルモン”が作れない

ここが最も重要です。脳の中では、やる気や集中力を生み出す「ドーパミン」、気持ちを安定させ安心感をもたらす「セロトニン」といった神経伝達物質が作られています。鉄は、これらの物質を合成する「チロシン水酸化酵素」「トリプトファン水酸化酵素」といった”工場の機械(酵素)”を動かすために、絶対に欠かせない部品(補酵素)なのです。

鉄不足でこれらの神経伝達物質が十分に作られないと、脳は正常に機能できません。その結果として、「不機嫌」「落ち着きがない」「癇癪」「夜驚症」「むずむず脚症候群」といった、一見”心の問題”に見える行動が引き起こされるのです。

  • 役割③:脳の”高速インターネット回線”工事が遅れる

赤ちゃんの脳では、神経細胞同士が物凄いスピードでネットワークを作り上げています。この脳の情報伝達をスムーズにする”配線カバー(ミエリン鞘)”を作る過程(ミエリン化)にも、鉄は不可欠です。乳幼児期の鉄不足が、その後のIQ、言語能力、認知機能にまで長期的な影響を及ぼす可能性が指摘されているのは、このためです。

☕️ ちあきのほっと一息、実践キッチンメモ

哲学医の話、少し難しかったかもしれませんね。でも、ご安心ください。ライフコーディネーターとして、そして母として大切にしてきた「ちりつも効果」の視点から、明日からできることを具体的にお伝えしますね。

鉄分補給の”賢い”戦略は、「吸収率」を意識すること。

食べ物に含まれる鉄には、お肉やお魚に含まれる吸収率の高い(約15-25%)「ヘム鉄」と、ほうれん草などに含まれる吸収されにくい(約2-5%)「非ヘム鉄」の2種類があります。

まずは効率の良い「ヘム鉄」を食卓の主役にしましょう。

【はじめの一歩:おすすめヘム鉄食材】

  • 鶏レバーペースト:栄養の王様。ペーストにして冷凍ストックしておくと便利。
  • 牛赤身ひき肉:ハンバーグやミートソース、そぼろなどアレンジ自在。
  • カツオ・マグロの赤身:お刺身を加熱してほぐすのが簡単。水煮缶も活用できます。
  • あさり:意外な鉄分豊富な食材。水煮缶を細かく刻んでスープやリゾットに。

【吸収率をさらにUPさせる”魔法の組み合わせ”】

鉄は、ビタミンC動物性たんぱく質と一緒にとると吸収率がぐんと上がります。

  • お肉や魚(ヘム鉄)+ブロッコリーやパプリカ(ビタミンC)
  • ほうれん草(非ヘム鉄)+鶏ささみ(動物性たんぱく質)

逆に、玄米に含まれるフィチン酸、お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を邪魔してしまうので、食事の直後は避けられるとより良いですね。

完璧な栄養バランスを目指して疲れ果ててしまうより、まずはこの小さな一歩から。その「ちりつも」が、赤ちゃんの未来の「体の土台」を、着実に、力強く育んでいきますよ。

第2章:「鉄」だけじゃない!成長をブーストする、最強の栄養チーム

最重要栄養素である「鉄」がその能力を最大限に発揮するためには、共に働く仲間たちの存在が欠かせません。栄養は常に「チーム戦」です。

  • たんぱく質:すべての基本となる”体のレンガ”

そもそも、私たちの体はたんぱく質でできています。鉄を運ぶトラック(トランスフェリン)も、貯蔵する金庫(フェリチン)も、たんぱく質です。良質なたんぱく質が足りなければ、いくら鉄を摂っても体はうまく使えません。肉、魚、卵、大豆製品をしっかり摂ることが大前提です。

  • 亜鉛(Zn): 細胞分裂のアクセル役であり、”味覚の守り神”。免疫細胞の活性化や、皮膚・粘膜の健康維持にも不可欠です。亜鉛不足は味覚障害を招き、偏食のきっかけになることも。
  • ビタミンD: 骨だけでなく「免疫の司令塔」。アレルギー反応の抑制や自己免疫疾患の予防にも関連が示唆されています。日光を浴びることで体内で作られますが、現代の生活では不足しがち。食事からの摂取が重要です。
  • ビタミンB群(特にB6, B12, 葉酸): 鉄と同様に「血を作る」重要なパートナー。特にB12は脳神経の発達にも関与し、動物性食品にしか含まれないため、意識が必要です。
  • 必須脂肪酸(DHA・ARA): ”賢い脳”を作る細胞膜の材料。脳の約60%は脂質でできています。青魚などに豊富なDHAをこの時期にしっかり摂ることが、脳の情報伝達の土台作りに繋がります。

第3章:哲学医がお答えします ― 保護者のギモン Q&A(増補版)

Q1. 「レバーは毎日あげても大丈夫?ビタミンAの過剰摂取が心配です」

A1. 素晴らしい視点です。レバーは栄養豊富ですが、脂溶性ビタミンであるビタミンAも多く含みます。日本の食事摂取基準(2020年版)では、0~2歳児のビタミンA耐容上限量は600μgRAE/日とされています。鶏レバーなら10g程度でこの量に達するため、ペースト状にしたものを週に1〜2回、小さじ1杯程度を目安にするのが安全でしょう。

Q2. 「ほうれん草やひじきなど、植物性の鉄分だけではダメなのでしょうか?」

A2. 決してダメではありませんが、鉄分補給の効率を考えると、吸収率の高い「ヘム鉄」を主役にし、植物性はビタミンCと一緒にとるなど、吸収率を上げる工夫を凝らした「名脇役」として考えるのがおすすめです。

Q3. 「フォローアップミルクや鉄強化のベビーフードは使った方がいいですか?」

A3. 上手に使えば、食事だけでは不足しがちな鉄分などを補う心強い味方になります。特に食が細いお子さんや、調理の時間が取れない時には積極的に活用しましょう。ただし、それだけに頼らず、様々な食材の味や食感を経験する機会を大切にする、という基本は忘れないようにしましょう。

Q4. 「アレルギーが心配で、お肉やお魚、卵を始めるのが怖いです」

A4. ご心配ですよね。しかし、日本小児アレルギー学会のガイドラインを含む最新の研究では、アレルギーを心配して特定の食物の開始を不必要に遅らせることは、逆にリスクを高める可能性があると指摘されています。自己判断で開始を遅らせず、まずはかかりつけ医に相談し、適切な時期と安全な進め方を一緒に計画していきましょう。

【今日の、私たちなりの結論】

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。

たくさんの栄養素の話が出てきましたが、どうか、「完璧な離乳食を作らきゃ」と、ご自身を追い詰めないでくださいね。

哲学医 | 小森:
離乳食の時期は、赤ちゃんの将来の健康という「建物」の、最も重要な「土台」を作っている時期です。これは、時間をかけてじっくり土壌を耕す「農場の法則」そのもの。焦らず、しかし着実に、必要な栄養という種を蒔いていくことが大切です。赤ちゃんの栄養を満たすことは、単に体を育てるだけでなく、その子の情緒の安定、知的好奇心、ひいては自己肯定感という心の土台を育むことにも直結しているのです。

ライフコーディネーター | ちあき:
そして、もし心が折れそうになったら、今日の話を思い出してください。あなたの愛情が足りないせいでは、決してありません。日々の食事作り、本当にお疲れ様です。私たちは、その大切な土台作りを、保護者の皆様と共に行う「伴走者」でありたいと願っています。

不安な時、迷った時は、どうぞ一人で抱え込まず、私たちのような専門家を頼ってください。

正しい知識というコンパスを手に、赤ちゃんの輝く未来への道を、一緒に歩んでいきましょう。


※食物アレルギーに関しては、必ずかかりつけ医の指導のもとで進めてください。この記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個々のお子様の状態を判断するものではありません。

この記事を書いた人

小森千明

ちあき

ライフコーディネーターの、ちあきです☀️ 夫である「哲学医」と共に、「愛は動詞」を信条として、家族やチームの温かい関係性を育むヒントを発信しています。

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