「お母さん、大好き!」と満面の笑みで抱きついてきた30分後、ささいなきっかけで火山が大噴火したかのように、手がつけられないほど怒り出す…。
こんにちは、3人の子育て真っ最中のライフコーディネーター、ちあきです。
何を隠そう、これは少し前の我が家の次男の日常風景。私は彼のことを親しみを込めて「人間ジェットコースターくん」と呼んでいました。天国と地獄を行ったり来たりするような、その激しい気分の浮き沈み。私はずっと、「私の愛情が足りないのかな」「育て方が悪いのかな」なんて、一人で胸を痛めていました。
でも、分子栄養学という視点から息子の体と向き合った時、そのジェットコースターの本当の操縦士が、全く思いがけない場所にかくれていたことに気づいたのです。
この記事を読み終える頃には、あなたも「どうしてうちの子はこんなに…」という悩みから解放され、お子さんの心の安定、そして家族の穏やかな時間を取り戻すための、具体的で温かい一歩を踏み出せるはずですよ。
我が家は「富士急ハイランド」でした…良かれと思ったおやつが燃料に
「お腹すいたー!」
夏休みや休日になると、この言葉がエンドレスに聞こえてきますよね。そんな時、手軽に子どものお腹を満たせる食パンやお菓子パン、甘いジュースは、忙しいお母さんにとって救世主のような存在。
もちろん、私もそうでした。
「はいはい、これ食べてご機嫌でいてね」と、良かれと思って与えていました。
でも、今思えば、まさにその”良かれ”が、我が家をスリル満点のテーマパーク「富士急ハイランド」に変えてしまっていたのです。
息子が特に荒れ模様になるのは、朝食を食べた30分〜1時間後。まさに、パンやお砂糖をたっぷり摂って、ぐんぐん上がった血糖値が、今度は急降下を始めるタイミングでした。
分子栄養学では、この血糖値の乱高下、通称「血糖値スパイク」が、心の状態に大きな影響を与えると考えられています。
甘いものや精製された炭水化物(白いパンなど)を食べると、血液中の糖分が急上昇します。すると体は、「大変だ!」と慌ててインスリンというホルモンを大量に出して血糖値を下げようとします。その結果、今度は血糖値が急降下してしまうのです。
この急降下の時、私たちの体は生命の危険を感じて、パニックになります。そして、興奮や闘争のホルモンである「アドレナリン」を放出するのです。
このアドレナリンこそが、イライラ、不安、そわそわ、そして攻撃的な態度の正体でした。
つまり、息子の癇癪は、心の問題である前に、体が発している「エネルギーが足りないよ!助けて!」という悲鳴だったのです。その子の性格や心の奥底にある不安が原因だと思っていたことが、実は食べたものによって引き起こされていたなんて。本当に、目から鱗が落ちる思いでした。
「応急処置」と「土台作り」。穏やかな心を育む2つのアプローチ
「じゃあ、具体的にどうすればいいの?」と思いますよね。ここには、実は2つの大切な視点があるんです。
一つは、今まさに起きそうな血糖値スパイクの火を消すための「応急処置」。
これは、お腹を空かせた子どもに「何を」与えるか、という視点です。ここで活躍するのが、お砂糖や白いパンといった炭水化物よりも、穏やかにエネルギーに変わる「タンパク質」です。
炭水化物が、一気に燃え上がる新聞紙のようなエネルギーだとすれば、タンパク質は、じんわりと長く燃え続ける薪(まき)のようなもの。血糖値の急上昇を抑え、安定したエネルギーを長く供給してくれる、心と体の頼もしい味方なんです。
そしてもう一つが、そもそも血糖値が乱高下しにくい「穏やかな体」を育むための「土台作り」です。
これは、私たちの家庭菜園と同じ考え方ですね(農場の法則)。日々の食事全体を通して、タンパク質や良質な脂質、食物繊維をバランスよく摂ることで、体が本来持つ血糖コントロールの力を高めてあげる。そうやって丈夫な土壌を耕しておけば、時々甘い雨が降っても、すぐに根腐れ(=血糖値スパイク)しない、しなやかな心と体が育っていくのです。
この「応急処置」と「土台作り」、両方を意識することで、子どもの心の波は、きっと穏やかなものに変わっていきますよ。
まずは今日からできる「応急処置」として、おやつの概念を「捕食」と捉え直すことから始めてみませんか?我が家で大活躍している「お助け食材」をご紹介しますね。
【ちあき家のお助け「捕食」リスト】
- お豆腐・納豆: 夏場は冷奴が最高!タンパク質が手軽に摂れます。
- サラダチキン: コンビニでも手に入る、頼れる味方です。
- じゃこ・アーモンドフィッシュ: カルシウムもたっぷり!ポリポリとした食感も子どもは大好き。
- イワシチップス: スーパーの乾物コーナーなどで見かける隠れた名品。栄養満点です。
- ナッツ類: アレルギーがないか確認しながら、少量から試してみてくださいね。
これらを、おやつの時間に「おかず」を出すような感覚で取り入れてみるのです。
まとめ | 穏やかな心は、穏やかな体から生まれる
子どもの激しい感情の波に揺さぶられていると、つい「この子の心が問題なんだ」と思ってしまいがちです。でも、その心の奥には、栄養不足でうまく機能できずにいる「体」の叫びが隠れているのかもしれません。
体の土台が整うと、心は驚くほど安定します。
まずは、今すぐできる「応急処置」としておやつを見直すこと。そして、焦らず「ちりつも」の精神で、日々の食事という「土台作り」に取り組んでいくこと。
完璧な親なんて、どこにもいません。私も失敗しながら、子どもと一緒に学び、一歩ずつ成長している途中です。
もし今、あなたが子どもの癇癪や気分のムラに一人で悩んでいるのなら、まずはキッチンから、できること一つから始めてみませんか。
穏やかな心の畑を、一緒に、ゆっくりと耕していきましょう。
追記
もしこの記事を読んで、「うちの子もそうかもしれない」「専門家の視点から、もっと詳しく知りたい」と感じてくださった方がいらっしゃいましたら。
私たちが運営に携わる小森こどもクリニックでは、こうした目に見えない「隠れ栄養問題」が引き起こす心と体のアンバランスを改善するお手伝いもしています。詳しい血液検査による栄養分析を行い、その結果に基づいて、日々の食事指導や、必要であればサプリメントのご提案も行う「栄養専門相談」を実施しております。
「こんなこと相談してもいいのかな?」と迷われた時も、一人で抱え込まずに、どうぞお気軽にお声がけくださいね。